ジャスミン茶と精油は、なぜ違う?『薬屋のひとりごと』から考える植物との距離感
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tae Aromatherapy & Treatment / tae Therapist School
【9月4日】

ジャスミン茶と精油は、なぜ違う?『薬屋のひとりごと』から考える植物との距離感
こんにちは、tae aromaです。
アニメ『薬屋のひとりごと』が好きで、見ていると時々気になる植物が登場します。
薬、毒、香り、化粧、食べ物。
物語の中では、植物が単なる背景ではなく、人の身体や暮らしと深く結びついています。
以前、ジャスミン茶とジャスミン精油について書いたことがあります。
今回はその記事を、あらためて見直してみました。
ジャスミンという一つの植物を通して、
「植物の形が変わると、私たちとの距離も変わる」という、
先週のシナモンにもつながるテーマが見えてきました。
ジャスミン茶は「花を入れただけのお茶」ではない
ジャスミン茶(茉莉花茶モーリホワチャー)は、中国を代表する花茶のひとつです。
一般的には、緑茶などの茶葉にジャスミンの花の香りを移してつくられます。
そう、「ジャスミンの花を乾燥させて、お茶に混ぜただけ」ではない、お茶なのです。
・茶葉と花を重ね、花が開いて香りを放つ時間を利用して、茶葉に香りを移していきます。中国では、この工程を「窨(いん)」と呼びます。
・福州の伝統的な製法では、茶葉と花を合わせ、温度や水分を見ながら香りを移し、時間を置いて花を取り除き、必要に応じて何度も繰り返します。
・現在も伝統的な福州茉莉花茶の製法では、複数回の「窨花」が重要な工程となっています。
つまりジャスミン茶は、花の香りを茶葉へ移す、非常に繊細な加工技術によって生まれる食品なのです。
中国では、いつから?
茉莉花茶の歴史は中国の花茶文化と深く関わっています。
福州市の資料では、北宋期には茉莉花を使って茶に香りをつける記録があり、
明代にはその製法が発展し、清代には福州の茉莉花茶が広く生産されるようになったとされています。
ジャスミン茶は「最近人気になった香りのお茶」ではなく、
中国で長い時間をかけて磨かれてきた、花と茶を組み合わせる文化なのです。
『薬屋のひとりごと』の世界を想像しながら飲むと、
いつものジャスミン茶も少し違って感じられるかもしれません。
現代の研究で見ると、何が起きているのか
私が面白いなと感じたのは、
・2022年に『Food Chemistry』に掲載された研究では、ジャスミン茶の香りを分析し、70種類の揮発性化合物が確認されている。
・その中に、ジャスミン茶の香りに特に重要な7つの化合物が抽出された。
・花の量、温度、時間などの着香条件によって、香りの質が変化することも示されている。
2023年の研究では、複数回の着香工程を調べたところ、
・回数が増えるにつれて香りの新鮮さ、濃さ、持続性などが変化し、
・887種類もの揮発性化合物が検出されました。
これは「887種類すべてがジャスミンの花から来た」という意味ではありません。
茶葉そのものに含まれる成分や、製造過程で変化した成分も含まれます。
ジャスミン茶の香りは、
単純に「ジャスミンの香りを足したもの」ではないことがわかります。
さらに2026年に発表された研究でも、
・着香の過程でジャスミン由来の香気成分が茶葉へ移行し、
・典型的な香りを形成することが確認されています。
昔から続いてきた職人の技術を、現代の分析機器が少しずつ言葉にしている。とても興味深いですね。
では、ジャスミン精油は?
ここで話が変わります。
アロマテラピーで扱われるジャスミンは、一般的な精油というより、
ジャスミン・アブソリュートとして流通するものが多くあります。
・花から芳香成分を抽出した、非常に濃厚な芳香素材です。
同じ「ジャスミン」という名前でも、
ジャスミンの花を見る。
ジャスミン茶を飲む。
ジャスミンの香りを嗅ぐ。
ジャスミン・アブソリュートを香料として使う。
これらは、すべて同じではありません。
植物の形も、濃度も、身体への入り方も違います。
「天然だから同じ」ではない
アロマテラピーを学んでいると、
「天然の植物だから身体にやさしい」という言葉を耳にすることがあります。
いえいえ、ここは少し立ち止まって考えたいところです。
天然であることと、安全性が高いことは同義ではありません。
植物にはさまざまな化学成分が含まれています。
その植物を、
食品として摂るのか。
お茶として飲むのか。
皮膚に使うのか。
香りとして嗅ぐのか。
濃縮した芳香素材として使うのか。
用途が変われば、考えるべき安全性も変わります。
先週のシナモンでも、
「食品として楽しむシナモン」と「非常に濃縮された精油」
を同じものとして扱わないことが大切だと書きました。
ジャスミンにも、同じことが言えます。
香りの研究と「効能」は分けて考える
ジャスミンの香りについては、心理・生理的な反応を調べた研究もあります。
たとえばジャスミン茶の香りについて、副交感神経活動などとの関連を調べた研究報告があります。
「ジャスミンはホルモンバランスを整える」
「子宮を強くする」
「陣痛を促進する」
といった昔からのアロマテラピーの説明を、そのまま現代医学の事実として扱うことはできないようです。
香りを嗅いだときの心理的・生理的変化を研究することと、病気を治療したりホルモンを調整したりすることは、別の問題だからです。
植物について書くとき、伝統的にどう語られてきたのか
現在の研究で何が確認されているのかを分けて考える。
この姿勢を大切にしたいと思っています。
日本では、ジャスミンはどう受け入れられた?
日本でもジャスミンは古くから知られていました。
茉莉花(マツリカ)が日本に渡来した時期については諸説あるようですが、 寛永年間(1624~1644年)に渡来したとする資料があります。
そして、ジャスミン茶そのものとは別に、
・沖縄では「さんぴん茶」として中国系のジャスミン茶文化が根づきました。
・近世の琉球では、中国茶とともに福州からジャスミンの香りを特徴とする茶が輸入されていたことが記録されています。
日本全国で見ると、現在のジャスミン茶は、
ペットボトルやティーバッグでも手軽に飲める、とても身近なお茶になりました。
中国で長い時間をかけて磨かれてきた花茶の文化が、
現代の日本では「日常のお茶」として私たちのすぐそばにある。
これも植物文化の面白いところではないでしょうか。
同じ植物でも、距離が違う
ジャスミンの花
ジャスミン茶
ジャスミン・アブソリュート
香水
アロマテラピー
どれも「ジャスミン」という言葉でつながっています。
でも、植物との距離は同じではありません。
花を眺めるのは、植物そのものとの距離。
お茶は、植物を食品として取り入れる距離。
香りを楽しむのは、揮発する成分を介して植物と出会う距離。
抽出・濃縮された芳香素材は、より慎重に扱う必要があります。
「植物だから」ではなく、「どんな形の植物なのか」を見る。
これは、植物と長く付き合ううえで、とても大切な視点だと思います。
植物との距離感を考える
『薬屋のひとりごと』を見ていると、昔の人にとって植物は、
薬であり
食べ物であり
香りであり
化粧であり
時には毒でもありました。
それは現代でも、本質的には変わっていないと思います。
ただ、抽出技術や加工技術が発達し、植物の成分をより濃く取り出せるようになった。
だからこそ、
「少ない量で強く働くものほど、慎重に扱う」という考え方が重要になります。
植物は、私たちの暮らしを豊かにしてくれます。
その植物と、どのくらいの距離で付き合うのか。
植物の知恵を現代の暮らしに生かすひとつの方法なのかもしれません。
週末は、温かいジャスミン茶を一杯。
花の香りが茶葉に移っていく長い時間を想像しながら、ゆっくり味わってみるのもよさそうです。
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ジャスミン茶と精油は、なぜ違う?『薬屋のひとりごと』から考える植物との距離感
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