お客様の沈黙が教えてくれたこと

セラピストLIFEを楽しくする「tae Therapist School」

心・からだ・肌をアロマテラピーで整える

ホリスティックAromaサロン「tae Aromatherapy & Treatment」

アロマテラピーサロンを開いて、気づけば27年を迎えようとしています。

精油の香りと手のぬくもりを通して多くの方と出会ってきました。

「27年も続いているなんてすごいですね」と言われることもありますが、実際は穏やかな日ばかりではありません。

人という、とても繊細な存在に触れる仕事だからこそ、戸惑いや葛藤に立ち止まる瞬間もあります。

それでもこの仕事を続けているのは、香りと手のぬくもりが、言葉を超えて人の『今』に寄り添う力を持っていると確信しているからです。

お客様が静かに目を閉じ、言葉を交わさないまま過ぎていく時間があります。

その沈黙の中には、最も深い“対話”が生まれています。

「仕事の話はしたくないんです」とおっしゃっていた方が、施術終わりに「呼吸が楽です」と言われる。

短いひと言だけど、日々の緊張や孤独、そして心の疲れがゆるんでいくのが私の手を通じて伝わってくるのです。

精油の香りに包まれながら何も語らずに過ごす時間。それでも体は確かに語りかけてきます。

外の風の気配が聞こえるほどの静けさの中、体の奥がゆっくりと呼吸を取り戻していくのです。

筋肉の張り、皮膚の温度、呼吸の深さ。

触れるたびに小さな“変化のサイン”が浮かび上がってくるのです。

「手当て」という言葉は、古いかもしれませんがとても深い意味があります。

病や不調を癒やすことではなく、その人の生命（いのち）に手を当てること。

触れているのは、単なる筋肉や皮膚の表面ではありません。

長い時間をかけて溜まってきた、疲労や緊張、心の記憶のようなものなのです。

それらがゆっくりと緩み、呼吸が深くなっていく - その変化を、私は「体が話し始めた」と感じます。

私にとっての施術は、まさにその声を聴く時間です。

生きている体と心の声を拾い上げているといった感じなのです。

この言葉にならない変化は、決して感覚や経験だけの話ではありません。

近年の研究によって、「触れること」が私たちの心身に与える科学的効果が明らかになってきています。

さらに、ゆっくりとした優しいタッチは「C触覚線維」を刺激し、安心感や信頼感を生み出す脳の領域を活性化させることが報告されています。

触れるスピード、温かさ、リズム - そのすべてが、科学的に心をゆるめる信号として働いていくのです。

「手当て」とは単なるマッサージではなく、心の奥深くに届く生理的な対話と言えるのではないでしょうか。

長く通ってくださるお客様の多くは、もう「疲れを取るため」だけに来られているわけではありません。

「ここに来ると、自分に戻れる気がする」「身体の声を聴く時間になる」

そんな言葉をいただいたりします。ありがとうございます。

私自身も、長いお付き合いの中で、お客様の呼吸のリズムや体の反応、言葉のトーンからいつもと違う何かを感じ取っています。まるで、体そのものが「今の私」を伝えてくれるよう。

沈黙の中で流れる信頼。言葉を交わさずとも通じ合う感覚。

これこそが、長年の関係性の中で育まれる深いケアの場なのだと思います。

研究テーマ	内容	主な効果
高齢者への手足マッサージ	精油を用いたハンド＆フットマッサージがα波を増加させ、ストレスを軽減	リラックス、安心感の向上
足底マッサージ	手術後高齢者に対して足底マッサージを行うと、機能回復が促進され、不安が軽減	歩行能力向上、精神安定
やさしい触れ方とオキシトシン分泌	ゆっくりしたリズムのタッチがオキシトシン分泌を促進	安心感、信頼感の増加